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最高裁判所第三小法廷 平成6年(行ツ)101号 判決 1998年7月14日

上告人

中央労働委員会

右代表者会長

山口俊夫

右指定代理人

花見忠

岡英夫

柴田博美

戸田成幸

右補助参加人

ノースウエスト航空日本支社労働組合

右代表者執行委員長

小室孝夫

右補助参加人

藤田順一

右両名訴訟代理人弁護士

山本政明

安原幸彦

山田安太郎

中丸素明

勝山勝弘

船尾徹

大槻厚志

被上告人

富里商事株式会社

右代表者代表取締役

フランク・ヴィ・クレア

右訴訟代理人弁護士

中山慈夫

中町誠

右当事者間の東京高等裁判所平成三年(行コ)第七四号不当労働行為救済命令取消請求事件について、同裁判所が平成六年二月一七日に言い渡した判決に対し、上告人から上告があった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人川口實、同浜田直樹、同日向栄の上告理由及び上告補助参加代理人山本政明、同安原幸彦、同山田安太郎、同中丸素明、同勝山勝弘、同船尾徹、同大槻厚志の上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして是認するに足り、右事実関係の下においては、本件解雇が不当労働行為に当たらないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、又は原審の認定に沿わない事実を交え、独自の見解に基づき原判決を論難するものであって、採用することができない。

よって、裁判官元原利文の補足意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

裁判官元原利文の補足意見は、次のとおりである。

私も、原審の認定した事実関係の下においては、本件解雇が不当労働行為に当たらないとした原審の判断は是認できないではなく、この意味で法廷意見に同調するものであるが、本件の経過にかんがみ、所見を付加しておきたい。

本件は、昭和五七年二月一八日に被上告人が上告補助参加人藤田に対してした解雇が労働組合法七条一号及び三号に該当する不当労働行為であるとして、千葉県地方労働委員会及び再審査庁である中央労働委員会が発した救済命令が、被上告人の提起した右救済命令取消訴訟の第一審において取り消され、原審もこれを維持した事案であり、労働委員会と原審までの裁判所が結論を異にした理由は、主として、上告補助参加人藤田が、昭和五五年五月から同五六年一一月にかけて被上告人の従業員に対して就業規則の懲戒規定に該当するような暴行、傷害等の行為をしたか否かに関して、事実認定が相違したためである。

上告人と上告補助参加人らの上告理由は、経験則違反、理由齟齬、理由不備、判断遺脱等をいうのであるが、帰するところ、原審の事実認定の誤りを指摘するものと理解される。そこで記録を精査したところ、なるほど、所論のいうように、上告補助参加人藤田の解雇当時、被上告人が、上告補助参加人組合に対して不当労働行為と認定される行為を繰り返し、地方労働委員会の救済命令が多数発令され、これが再審査申立て及びその取消訴訟を経て確定しており、本件解雇はそのような状況の下で行われたものであること、解雇理由とされた上告補助参加人藤田の行為のうちの一つである傷害の点については刑事事件において無罪が確定していることなどが認められ、上告人及び上告補助参加人らの主張に沿う証拠も存在するところであるが、他方、原審の認定に沿う証拠も存在するものと認められるので、そのいずれを採るかは、原審の専権に属する事実認定の問題に帰着するものといわざるを得ない。そして、その認定、判断の過程において、上告理由のいう経験則違反等が存するとまで認めるには至らなかった次第である。

(裁判長裁判官 尾崎行信 裁判官 園部逸夫 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 金谷利廣)

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